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復帰以降、沖縄振興特別措置法に基づく振興開発が実施され、
その予算措置として国庫支出金が傾斜配分されている。
内閣府沖縄担当部局予算(2001年度までは沖縄開発予算)は、国直轄事業を除くと、
おおむね、県および市町村への国庫支出金として交付されている。
内閣府沖縄担当部局予算は、2011年度には2301億円まで減少した。
12年度予算では、全国制度の一括交付金にはない経常的経費や市町村事業も対象とする
沖縄振興特別推進交付金803億円が形状され、総額2937億円に増加した。
ソフト分野への支出は、人材の育成、とりわけ初等・中等教育の充実に資する分野への傾斜配分が望まれる。
沖縄県歴史的要因(米国統治27年)、地理的要因(離島県)、社会的要因(米軍基地の立地)などから
国が沖縄の進行に資するため、政策バイアスを設けているというのが国の予算計上の理由である。
こうした国の財政措置は米軍基地立地とのバーターとしての性格が強いとの感は否めない。
米軍基地に関わる沖縄県の過重負担の機会費用は、政治家や国民が国土防衛について真剣に議論してこなかったことであり、
その歪みが昨今の領土問題に当に如実に表れていると言えよう。
次に、沖縄県の域際収支について見てみよう。
沖縄県の移(輸)入額と移(輸)出額の乖離は極めて大きい。
観光産業やIT産業、農業などによって、移(輸)入を賄うのは難しく、
他の低所得県と同様に、その大半を国庫支出金や地方交付税などといった国からの補助金等で補填している。
ただ、2007年度における県民総所得に占める公的支出の割合は47都道府県中3位で、
人口1人当たり金額は9位であり、飛び抜けて高いわけではない。
1972年に県民総所得の15.5%を占めていた米軍基地関連収入は、2009年には5.2%であり、
観光収入9.6%の約2分の1まで低下している。
米軍基地立地の県経済に与える影響は限定的であると言える。
沖縄県の持つ縦深性から、軍事基地が完全になくなることは、現段階においては現実的ではないが、
米軍基地がなくても沖縄経済は成立するであろう。
無論、他の低開発県と同様に、雇用の場を求めて大都市圏への人口移動の増加は不可避であるが、
人口1人当たり取得水準は現在と大差はないレベルで維持できるものと思われる。
沖縄県経済における米軍基地にまつわる収入を過大評価すべきではない。
最後に、人材育成について概観しよう。
県民福祉の維持網状を考えた場合、ハード面の整備もさることながら、
重点施策を教育や健康、環境などといったソフト面の充実に舵を取る必要がある。
その中でも、県勢発展の最大の課題は、長期的な視点からの人材育成にあることは、
復帰以降、指摘されてきたことであり、論を俟たない。
成人のスキル・アップ等を図ることも大切であるが、県勢の発展を数十年単位で考えた場合、
初等・中等教育の充実何よりも肝心である。
初等・中等教育の中で、個々人の志向の枠組みがほぼ形づくられ、
それ以降は、おおむね、その間に形成された選好に基づき行動すると言われている。
高等学校までの教育の在り方が、地域社会の総意形成の基礎となり、
地域力を大きく左右するものと思われる。
社会貢献に価値を置き、目標を定め、忍耐強く努力する人材の育成こそが沖縄県の喫緊の課題である。
以上、沖縄経済40年を検証してきたが、低所得県の経済指標や財政指標は、全国平均との格差が極めて大きく、
全国との比較になじまないものが多い。
長期的には全国水準を目標とすべきであるが、足元を見つつ、着実な成長を目指すべきであろう。
日本経済研究センターによると、2007~2020年平均の実質経済成長率、および人口成長率の両者とも、
第1位沖縄県、第2位東京都、第3位神奈川県と予測しており、沖縄経済の将来は明るいと言えるだろう。
(明治大学教授)
沖縄タイムス 10月12日